【自戦記解説】
升田式石田流の基礎と攻め方①

こんにちは。将棋ブロガーの早峰です。今回は将棋俱楽部24の自戦記解説です。

今回は、先手番の筆者が升田式石田流を採用しました。

それでは、初手から1手ずつ解説していきます。

☗7六歩

先手は初手に角道を通して角を活用します。

筆者の対戦時のレートはR2383です。

☖3四歩

後手も初手に角道を通して角を活用します。

対戦相手の対戦時のレートはR2440です。

☗7五歩

先手は7筋の位を取りました。

この手が升田式石田流への第一歩です。

☖8四

後手は飛車先の歩を突き、居飛車戦法を明示しました。

これにより戦型は対抗系になりました。

☗7八飛

先手は飛車を7筋に振って、升田式石田流を目指します。

『位を取ったら位の確保』という格言に沿った手です。

☖8五歩

後手は飛車先の歩を突き超しました。

なお、ここで☖8八角成☗同銀☖6五角は【補足解説①】にて解説します。

【補足解説①】

本譜の☖8五歩に変えて☖8八角成☗同銀☖6五角とした局面を見ていきます。(下図)

☖6五角には☗7六角が先手の用意の切り返しです。

☗7六角以下、☖2七角成には☗4三角成として、馬の働きの差で先手が十分です。

また、☗7六角以下、☖4二玉なら先手も☗3八銀と受けておいて1局の将棋になります。

☗4八玉

先手は玉を囲い始めます。

『居玉は避けよ』『王飛接近すべからず』という格言に沿った手です。

☖6二銀

6二の地点に銀を上がり、6三と5三の歩にヒモを付けつつ、7筋に利きを足しました。

なお、ここで☖8六歩は【補足解説②】にて解説します。

【補足解説②】

本譜の☖6二銀に変えて☖8六歩とした局面を見ていきます。(下図)

☖8六歩以下、☗同歩☖同飛と進行しますが、そこで☗7四歩が先手の反撃です。

☗7四歩以下、☖同歩には☗2二角成☖同銀☗9五角が王手飛車で先手が優勢です。

また、☗7四歩に☖6二銀と変化しても、☗2二角成☖同銀☗7七角が飛車銀両取りで先手が優勢です。

☗3八玉

先手はさらに玉を固く囲いにいきます。

☖4二玉

後手も玉を囲い始めます。

なお、ここで☖8六歩は【補足解説②】で解説した通り、☗同歩☖同飛に☗8八角成☖同銀☗7七角が飛車銀両取りで先手が優勢です。

☗2八

さらに玉を囲っていきます。

☖3二玉

後手も玉を囲っていきます。

☗7六飛

先手は飛車を浮かして8筋の歩の交換を防ぎます。

なお、升田式石田流において☖3二玉に☗7六飛が大切な手になるため、その理由を【補足解説③】にて解説します。

【補足解説③】

升田式石田流において☖3二玉に☗7六飛が大切な手である理由を解説します。

本譜の☗7六飛に対して後手が☖6四歩とした局面を見ていきます。

☖6四歩以下、先手は☗3六飛と揺さぶりをかけていきます。

☗3六飛は後手の3四も歩を狙った単純な手ですが、後手は受け方が難しくなっています。

☗3六飛以下、☖8八角成☗同銀☖3三玉とすれば3四の歩を守れますが、駒組みの大きな制約になります。

また、☗3六飛に☖8八角成☗同銀☖4五角と変化しても、☗6六飛で問題ありません。

☖8八角成

後手から角を交換してきました。

【補足解説③】にて解説した☗3六飛を防ぐため、この局面で後手から角を交換するのが定跡になっています。

☗同銀

先手は当然、銀で角を取り返します。

先手は手順に角を取り返したため、1手得をしています。

☖2二銀

先手の☗3六飛に☖3三銀を用意した手です。

☗3八銀

この1手で先手の片美濃囲いが完成しました。

角を交換している将棋では、角打ちに強い陣形を作る必要があるため、穴熊よりも美濃囲いの方が適しています。

☖3三銀

銀を2二から3三へと移動させることで壁駒を解消しました。

これにより後手の玉は2二へ動けるようになりました。

開戦前に壁駒は必ず解消することが大切です。

☗7八金

金を7八に上がって8筋をカバーしつつ角の打ち込み場所を消します。

升田式石田流はバランス重視の陣形で攻めを狙っていきます。

☖1四歩

端歩を突き、将来的な玉の逃げ道を作りました。

『端歩は心の余裕』という格言がありますので、端歩は開戦前についておきたいところです。

☗1六歩

先手も端歩をついて将来的な玉の逃げ道を作りました。

☖6四歩

この手は次に☖6三銀と上がって先手の7筋の攻めを受けるための1手です。

また、先手からの将来的な☗5五角のような手を緩和した手でもあります。

☗7七銀

先手は銀を活用して攻めに参加させます。

昔の升田式石田流はここで☗7七桂と跳ねていたため、現代の升田式石田流は積極的と言えます。

☖6三銀

先手が☗7四歩から1歩交換する手を防いだ手です。

なお、これまで先手が☗7四歩と指さなかったのは、☗7四歩に☖7二金で後手の陣形が手厚くなるためです。

☗6六銀

6六に銀を上がり銀を中央に活用していきます。

なお、ここでは☗8六歩という手もあるため【補足解説④】にて解説します。

【補足解説④】

本譜の☗6六銀に変えて☗8六歩とした局面を見ていきます。(下図)

☗8六歩の狙いは飛車を交換することにあります。

以下、☖同歩☗同飛☖同飛☗同銀と進めば、互角ながら先手が指しやすい局面です。

しかし、☗8六歩には陣形を引き締める☖5二銀が強敵です。(上図)

☖5二銀以下、先程と同様に☗8五歩☖同飛☗8六飛☖同飛☗同銀と飛車を交換します。

☗同銀以下、☖6九飛☗5九飛☖同飛成☗同金が後手の継続手で、先手の片美濃囲いが崩れてしまいます。

なお、☖6九飛に対して☗7九飛は☖8七角、☗8八飛には☖6五角があるため、☗5九飛は仕方ありません。

最終手の☗同金とした局面は互角の形勢ですが、後手陣が鉄壁なうえに、先手陣がバラバラで先手が勝ちにくい将棋と言えます。

☖4四歩

先手から☗4六角と角を設置して攻める筋を警戒した手です。

☗7七桂

桂馬を跳ねて攻めに参加させます。

『左桂は振り飛車の命』という格言に沿った手で、振り飛車を指す時は左桂を積極的に活用することが大切です。

☖5二金右

この1手で離れ駒だった6一の金と6三の銀にヒモが付きました。

なお、先手が桂馬を跳ねた後も6三の銀が浮いていると、先手から☗8五桂☖同飛☗9六角という攻めがありました。

☗5五銀

銀を中央で大きく使います。

この手は升田式石田流を指す上で非常に大切な1手ですので【補足解説⑤】にて解説します。

【補足解説⑤】

☗5五銀が升田式石田流において大切な1手である理由を解説します。

本譜の☗5五銀に変えて☗5六歩とした局面を見ていきます。(下図)

☗5六歩以下、後手は☖9四歩と端歩を伸ばします。

☖9四歩以下、☗4六歩と自然に厚みを作っていきますが、☖5四角と打たれて早くも先手が敗勢です。

☖5四角は単純な飛車取りですが、☗9六飛にも☖9五歩があるため、既に適当な受けがありません。

升田式石田流は飛車が狭いため、平凡に駒組みを続けていると☖5四角を狙われて悪くなってしまいます。

本譜の☗5五銀は☖5四角を防ぎつつ、飛車の可動域を広げ、次に☗6六飛という手も狙った一石三鳥の好手になっています。

【自戦記解説】升田式石田流の基礎と攻め方②へ続きます。

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