【自戦記解説】
対ダイレクト向かい飛車の考え方②

こんにちは。将棋ブロガーの早峰です。

今回は将棋俱楽部24の自戦記を1手ずつ解説していきます。

なお、前回の記事は以下リンクに掲載してあります。

☗7七銀

先手は8八の銀を7七へと移動させ壁駒を解消しました。

これにより玉が左側へ逃げるスペースを作ることができました。

戦いが始まる前に壁駒を解消しておくことはとても大切です。

☖7三桂

後手は守備の桂馬を活用してきました。

どこかで☖6五桂や☖8五桂のように活用する含みを見せた1手です。

☗2五歩

先手は満を持して飛車先の歩を突き超しました。

後手の3三の銀を釘付けにする意味があります。

対角交換振り飛車では飛車先の歩は目標にされやすいので早めに突き超さないのがオススメです。

☖5四歩

この手は陣形の懐を広げつつ将来的な☗5五桂のような手を消した意味があります。

こちらも右玉でよく見られる手です。

☗6八金上

後手の動きに対応できるように自陣を引き締めた手です。

同じようでも☗6八金寄は4七の銀が放れ駒となり自陣に不安が残ります。

☖9四歩

後手は端歩を伸ばして将来的な玉の逃げ道を作りました。

『端歩は心の余裕』という言葉もありますので開戦前に端歩は突いておきたいところです。

☗9六歩

先手も端歩を突いて将来的な玉の逃げ道を作ります。

☖8四歩

この手は将来的に☖8五桂と跳ねたときの支えになっています。

☗1六歩

この手は『居飛車の税金』とも言われ、対振り飛車において端角(☖1五角)を警戒した意味があります。

しかし、今回は相手が角交換振り飛車なので手待ちの意味合いが強いです。

☖1四歩

後手も端歩を伸ばしました。

お互い指し手が難しくなってきたため、こちらも手待ちという意味合いが強そうです。

『手のない時は端歩を突け』という格言もありますので、手に困ったら端に目を向けることも大切です。

☗3七桂

先手は桂馬を跳ねて活用していきます。

次に☗4五桂と跳ねる狙いもあるため積極的な手と言えます。

☖5五金

次に☗4五桂からの攻めが厳しいため、後手は持ち駒の金を天王山に打って局面を動かしてきました。

後手は次に☖4六金として飛車先を突破する手を狙っています。

☖4五歩

先手は歩を伸ばし焦点を4六から4五へとずらしました。

ここでは☗4八飛も自然な1手に見えますが、☖2六角の返し技があり先手が面白くありません。

☖同金

後手は4五の歩を食い破りましたがこの手は良くなかったようです。

ここでは陣形の厚みを活かして☖7五歩☗同歩☖6五金と戦線を拡大する手が有力でした。

☗同桂

先手は当然、桂馬で金を取ります。

☖同飛

後手は飛車で桂馬を取り、金と桂馬の交換になりました。

☗3二角

後手の飛車が動いて出来た隙に角を打ち込みました。

遅い攻めのようですが☗2一角成と☗2三角成を狙った確実な攻めになっています。

このように駒得した時は、確実な攻めを狙うのが効果的です。

☖1二角

後手は1二に角を打ち、☗2一角成と☗2三角成を防ぎました。

次に☗4二飛として先手の3二の角を捕獲する狙いがありますが、この瞬間は打った角が全く働いていないため先手は優勢を拡大するチャンスを迎えています。

☗2四歩

先手は飛車先の歩を突き捨てます。

対抗系の将棋は飛車先の歩を突き捨てるタイミングが非常に重要になってきます。

☖同銀

後手は突き捨てた飛車先の歩を銀で取ってきました。

なお、☖同歩と取ると☗1四角成がありました。

2二歩

先手は歩を2二に打って桂馬を取りにいきます。

この手によって☖4二飛にも☗2一角成と出来るようになったため、角を取られる心配がなくなりました。

☖5五桂

後手は5五に桂馬を打ち、銀取りをかけました。

先手の歩切れを突いた鋭い手で、先手に歩があれば☗4六歩と簡単に受けることができました。

☗5六銀

先手は銀を逃がしつつ飛車に当てて先手を取って受けます。

変えて☗3八銀では☖4七歩や☖4六歩と歩を垂らされて先手が忙しい局面になります。

☖4九飛成

後手は空いたスペースに飛車を成り込みました。

龍を作って後手も好調に見えますが先手は返し技を用意しています。

☗4八飛

先手は飛車を龍にぶつけて捌きを狙います。

この手が先手にとって重要な1手になるので、その理由は後ほど【補足解説④】にて解説します。

☖同飛

後手はぶつけられた飛車を取りました。

相手にせず、☖1九龍としたいところですが先手にも☗4一飛成と龍を作られてしまうと後手玉が危険になるため交換は仕方ありません。

飛車と龍の交換になったためこの交換は先手が得をしたと言えます。

☗同金

先手は飛車を取り返してお互いが飛車を持ち駒にしました。

しかし、この瞬間は先手の金が離れ駒になってしまったため後手から嫌な手が見えます。

【補足解説④】

本譜の☗4八飛が重要な1手である理由を解説します。

前述の通り、本譜の☗4八飛に対して後手が龍を逃がせば、先手も☗4一飛成と龍を作ることが出来ます。

そのため、本譜の☗4八飛は飛車と龍の交換を強要した手と言えます。

比較のため、本譜の☗4八飛に変えて☗2一歩成と指した場合を見ていきます。(下図)

☗2一歩成以下、一例として☖1九飛成☗4八飛☖4七歩☗同銀☖8五桂☗6六銀☖8八香のような進行があります。

最終手☖8八香の局面でも先手が優勢ですが囲いが崩れ、局面が複雑になっています。

本譜のように☗4八飛とすれば飛車と龍の交換で先手が得となり、何よりも局面を簡潔に収めることが出来ます。

将棋において自分が間違えにくい局面を作るという考え方は非常に大切です。

☖4二飛

後手は放れ駒の角と金に狙いを定めて両取りをかけてきました。

しかし、この手も織り込み済みで返し技があります。

なお、大駒を持ち駒にしたら常に相手の放れ駒を狙うのがセオリーのため☗4二飛のような手は積極的に狙うことが大切です。

逆に相手に大駒を持たれたら自陣に離れ駒を作らないようにすることが大切です。

☗4一飛

この手が先手の返し技で、4八の金にヒモをつけつつ、☗2一歩成と☗9一飛車成を狙っています。

『両取り逃げるべからず』という格言もありますので、両取りをかけられても強気に攻め合う手を探すことが大切です。

☖3二飛

後手は先手の角を取ることに成功しました。

しかし、この瞬間は後手の飛車の働きが弱いため、先手は寄せを狙います。

なお、本譜の☖3二飛に変えて☖同飛☗同角成☖4三飛と再度両取りをかける手は【補足解説⑤】にて解説します。

【補足解説⑤】

本譜の☗3二飛に替えて☗4一飛☖同角成☗4三飛と再度、角金両取りをかける手について解説します。(下図)

今回も本譜と同様『両取り逃げるべからず』の格言に従って☗5二馬と馬を切り飛ばして対応します。

☗5二馬は後手玉に詰めろをかけた手になっていますので☖同銀と応じますが、そこで☗5八金右と受けに回っておきます。

☗5八金右以下、後手は☖4九飛成と龍を作ることができますが、先手玉は金か飛車を渡さない限りは鉄壁です。

逆に後手陣は守備駒が銀1枚と薄く、先手は次に☗5一飛や☗2一歩成など楽しみが多く、指し手に困りません。

☗9一飛成

先手は香車を補充しつつ、後手玉の近くに龍を作ることに成功しました。

これで駒割りは金香と角桂の交換となり、先手がやや駒損ですが、駒の働きの良さと玉の固さで先手が大きくリードしています。

☖2二飛

後手は次の☗2一歩成を防ぐため2二の歩を払いました。

☗9二龍

先手は単純な王手をかけて後手玉を寄せに行きます。

このように玉と1マスはさんで龍を配置することを一間龍と言い、寄せの強力な形です。

☖6一玉

後手は6一へと玉を逃がしました。

☖8二角と合駒をして受けると☗8三金があるためここは逃げる1手です。

☗5三金  

まで65手で後手の投了となりました。

この金を☖同金と取ると☗2二龍と飛車を抜かれてしまいますし、放置しても次の☗6三金が厳しい1手になります。

また、次の☗6三金を防いで☖7二角とする手は☗9一龍で後手玉が詰んでしまいます。

先手玉が鉄壁なうえに、後手は持ち駒が角と歩のみで受けも難しく、攻防ともに見込み無しということで投了となりました。

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